糖尿病とは血液の糖(血糖)が慢性的に高くなる状態です。すい臓という臓器が生活習慣の悪化・加齢・遺伝など様々な要因により疲弊することで起こります。
糖尿病、すなわち高血糖の状態は自覚症状がほとんどありません。そのため病院で定期検査をうけず長年放置された状態となってしまったり、健診で指摘されても放置していたりすることが少なくありません。
では糖尿病は怖くない病気なのか?答えはNOです。
高血糖の状態は血管にストレスがかかり、ゆっくりとしたスピードですが、しかし確実に血管に障害を引き起こします。それにより糖尿病の合併症を引き起こすのです。代表的な合併症には以下のものがあります。
糖尿病性神経障害:両足の痺れ・違和感 立ち眩み EDなど
糖尿病性網膜症:視力低下 失明など
糖尿病性腎症:タンパク尿 むくみ 最終的には透析になる方もいます。
狭心症・心筋梗塞
脳梗塞
足壊疽
いずれもQOL(生活の質)を低下させ、中には命に関わる怖いものまであります。
血糖をしっかりと改善させ糖尿病合併症を防ぐ事が糖尿病治療の目標になります。
平成28年の国民健康・栄養調査では糖尿病有病者と糖尿病予備軍はいずれも約1000万人と推計され非常に身近な疾患です。健康診断などで糖尿病の疑いがあると言われた時は一度ご相談ください。
血糖:糖尿病は血糖が高くなる病気ですので血糖が最も基本的な検査になります。血糖には朝食を摂らない空腹の状態で測定した空腹時血糖と、食事をとった状態で測定した随時血糖があります。健康診断は基本的には空腹時血糖になります。健康診断で空腹時血糖が100以上なら来年も必ず健診は受けた方がいいと思います。空腹時血糖が110以上なら病院受診を勧めます。空腹時血糖が126を超えると糖尿病が強く疑われます。
HbA1c:HbA1c(ヘモグロビンエーワンシーと読みます)は糖尿病では最も重要となる検査です。血液中の赤血球という細胞の中のヘモグロビンのなかにどの程度糖がくっついているかを検査します。健常な方は5%程度ですね。5.6~5.9%なら来年健診を必ず受けましょう。6.0%以上なら糖尿病が疑われますので受診を勧めます。6.5%以上は糖尿病が強く疑われる数値です。HbA1cが7%を超えると合併症が進行する可能性がありますので注意が必要です。
尿検査:糖尿病は尿という字がつくため、尿の病気という誤解がありますが前述したとおり糖尿病は血糖が高くなる病気です。尿は血液から作られるため血糖が高くなると尿に糖が溢れ出るのです。個人差が大きいですが血糖が180ほどで尿糖が出ます。
☆当院では血糖、HbA1c、尿検査はその日のうちに10分程度で結果がわかります。
血糖 HbA1c 測定器
高血糖状態が続くことで様々な合併症が起こります。血管障害が主な原因です。細い血管が障害されることで起こる合併症は糖尿病特有のもので神経障害、網膜症、腎症が糖尿病3大合併症といわれます。何れもHbA1cを7未満に抑えることで進行予防が期待できます。
糖尿病性網膜症
黒目の奥に網膜という場所があり、そこには細かい血管がたくさんあり目に栄養や酸素を供給しています。慢性的な高血糖が続くことで網膜内の血管の血行障害や出血が起こり、視力低下や失明を引き起こします。糖尿病性網膜症により失明する方はなんと年間3000人ほどいるといわれます。そして網膜症の怖いところは進行しない限りは無症状であることも少なくない、つまり自分自身で気づいたときにはかなり進行した状態が多いということです。糖尿病と診断されたら必ず眼科受診をしましょう。当院では糖尿病連携手帳を用いて眼科と連携を取りながら治療にあたっています。
糖尿病性神経障害
3大合併症のうち1番最初に発症する例が多いです。神経に栄養や酸素を運ぶ細い血管が障害を起こし栄養不足や代謝異常を引き起こすことにより神経が障害されます。一般的には血液のめぐりが悪い抹消(簡単にいえば靴下や手袋を履くところ)で左右対称に症状が起こります。足の裏に薄紙が張り付いているような感覚が続き、次第に痛みに進行していく経過が一般的です。その他、立ち眩み、便秘、ED(勃起不全)など様々な症状があります。症状に合わせ薬を処方します。お困りのことがあれば相談ください。
糖尿病性腎症
腎臓は尿をつくる臓器です。尿の原料は血液ですので、尿をつくる腎臓は血管の塊のような臓器です。血管を障害する糖尿病は腎臓にも悪影響があります。
腎臓は血液の浄化装置のような役割を担っており、糖尿病性腎症でその機能が障害されると倦怠感・むくみなど様々な症状を引き起こします。最終的には命に関わる怖い合併症ですが、症状が出てくるのは末期の状態となります。末期になると透析療法を受けることになりますが糖尿病が原因で透析導入となる方は年間16000人ほどに昇り原因疾患の第一位となっています。糖尿病性腎症を最初に見つけるためにはアルブミン尿という特殊な検査が必要になります。当院では3カ月に1回、アルブミン尿を測定し早期発見・早期治療を心がけています。
糖尿病で起こる合併症は3大合併症のほか動脈硬化による合併症があります。3大合併症と異なる点は、3大合併症が細い血管の障害であったことに対して、動脈硬化は大動脈など太い血管に起こります。脳梗塞、心筋梗塞、足壊疽など非常に怖い疾患ばかりです。また糖尿病のほかに高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙などが原因になります。糖尿病の方は、血圧管理、脂質管理、肥満管理、禁煙を合わせて行う事がとても大切です。
Q.糖尿病は不治の病と聞いたのですが本当ですか?
A.糖尿病は治らない病気です。治すのではなく上手く付き合っていく病気と考えましょう。糖尿病はすい臓という臓器が疲弊することで発症します。発症した時点ですい臓の機能は半分以下になっています。半分以下になったすい臓が正常な状態に戻ることはありませんから、糖尿病は不治の病というわけです。糖尿病の薬なしで糖尿病がコントロールできることはありますが、薬を飲んでいないからといって糖尿病が治ったとは誤解せず定期的な検査や検診を受け続けることがとても大切です。
Q.糖尿病は遺伝すると聞いたのですが?
A.家族に糖尿病の方がいた場合は糖尿病になりやすい可能性はあります。ただ糖尿病は遺伝と環境的なものが合わさって発症するといわれています。糖尿病になりにくいような生活習慣など心がけていれば予防も可能でしょう。ただ早期発見がとても大切な病気ですので家族に糖尿病の方がいる場合は、定期的な健診を受けることをすすめます。
Q.インスリンってなんですか?
A.インスリンはすい臓から分泌されるホルモンの一種で血糖を下げる力をもっています。糖尿病はすい臓が疲弊しインスリンが適切なタイミングで十分分泌できないため血糖が高くなってしまう病気です。インスリンを自力で出せなくなってしまった人はインスリン注射が効果的です。
Q.インスリン注射を始めてしまうと死ぬまでインスリン注射が続くと聞いたのですが?
A.以前はインスリン治療が最後の砦でした。薬だけではどうしようもない状況になってからインスリン注射が開始することが多かったので、そのようなイメージがあるとは思います。現在では、すい臓の疲弊を抑える目的などで早期からインスリン注射を導入することが少なくありません。そのような場合は、安定すればインスリン注射を一旦やめることもあります。また1型糖尿病という特殊な糖尿病はインスリン注射をしなければ命に関わることもあるため、インスリン注射は一生続きます。
Q.低血糖ってなんですか?
A.糖尿病は血糖が高くなってしまう病気ですが、治療によって血糖が下がりすぎてしまうことがあります。血糖値が70をきると低血糖です。血糖が低くなりすぎてしまうと異常な空腹感、冷や汗、動悸がするなど様々な影響があります。低血糖が続くと意識を失うこともある怖い状態です。インスリン注射をされている方や、飲み薬ではSU剤(アマリール、グリミクロ、オイグルコンなど)などを飲まれている方は注意が必要です。
Q.低血糖になったらどのように対処すればよいですか?
A.糖分を速やかに補給することが大切です。インスリン注射をされている方やSU剤を飲まれている方などは糖分を携帯する習慣をつけましょう。おすすめはスティクシュガーです。0キロカロリーのシュガーは効果がないので注意してください。低血糖症状がでたらスティックシュガー10g程度を補給するといいでしょう。ジュースなどもおすすめですが、ジュース類や菓子類は携帯しているとついつい食べてしまうかもしれないのでスティックシュガーが一番いいと思います。テレビなどで飴やチョコを使用しているのを時々見かけますが飴は中々溶けませんし、チョコは糖分だけでなく脂質も多い食品ですのであまりおすすめはしません。